造血幹細胞の維持機構と血球分化機構の解明

研究内容概要

造血幹細胞の自己複製能と多分化能は骨髄内の特別な微小環境(ニッチ)との相互作用により維持されており、その破綻は造血不全や異常増殖の原因の一つである。

我々は,造血幹細胞の支持機構を司るニッチ細胞の同定とその異常に伴う造血異常を対象とし、 ニッチ細胞の異常が正常造血にどのような影響を及ぼすのか,またニッチ細胞自体はどのようにして発生し維持されているのか,疾患発症時にどのような変化が起きるのかを明らかにすることを目的として研究を進めている。ヒト検体・遺伝子改変マウスを用いた解析を進め、実際のヒト疾患の病態の究明を目指している。

造血幹細胞の維持機構の解析

造血幹細胞の維持機構の解析図
図1

蛍光免疫染色法図
    図2: 蛍光免疫染色法(マウス骨髄)

骨髄内免疫染色法による造血ニッチ細胞の同定と造血異常発生時のニッチ細胞の動態解析

  • 免疫染色法:
    野生型または造血不全マウス骨髄もしくは脾臓の凍結切片を作製し造血幹細胞と造血ニッチ細胞の免疫染色を行い、その局在と形態の変化を観察する。
  • 骨髄移植モデル:
     野生型造血幹細胞を骨髄から採取し、遺伝子改変マウスをレシピエントとした骨髄移植を行い,造血ニッチ細胞における遺伝子機能の解析を行う。
  • ソーティング技術を利用したニッチ細胞の単離:
    マウス骨髄より非血液細胞をフローサイトメトリーを用いて単離し、造血支持細胞を同定する。

主な発表文献

  1. エリスロポエチン産生細胞の同定
    (Obara, et al. Blood, 2008)
  2. 胎児造血幹細胞発生におけるAML1とNotch相互作用の解析
    (Nakagawa, et al., Chiba. Blood, 2006)
  3. 胎児造血幹細胞発生におけるNotch1の役割の解明
    (Kumano, Chiba, et al. Immunity, 2003)

血球分化機構の解析(巨核球・血小板分化機構の解析)

血球分化機構の解析図
図3

巨核球特異的遺伝子発現システム図
    図4: 巨核球特異的遺伝子発現システム

巨核球・血小板分化機構の解析

骨髄支持細胞からの分化シグナルが重要だと考えられている巨核球・血小板分化を中心に、血球分化調節機構の解析を進める

  • ウイルスを用いた遺伝子導入法: 
    巨核球などの細胞分裂があまり活発でない細胞にも遺伝子導入が可能なセンダイウイルスを用いた遺伝子導入を行い、正常な巨核球分化に必要な分子を同定する。
  • 遺伝子発現システムを利用した巨核球分化経路の解析:
    巨核球特異的蛋白であるGPIbプロモーターを用いた遺伝子発現システムを用い巨核球前駆細胞の局在・分化経路を明らかにする。

主な発表文献

  1. 血小板におけるアダプター蛋白Lnkの機能解析
    (Takizawa, Nishikii, et al. J. Clin Invest, 2010)
  2. マウスES細胞由来巨核球分化過程の解析
    (Nishikii, et al. J. Exp Med, 2008)
  3. ヒトES細胞由来巨核球分化過程の解析
    (Takayama, Nishikii, et al. Blood, 2008)
  4. アクチン制御蛋白WAVEの巨核球造血における機能解析
    (Eto, Nishikii, et al. Blood, 2007)

血液細胞におけるHes1発現振動の証明と発現振動による分化制御機構の解析

  • real time PCR法:
    さまざまな血液前駆細胞や細胞株を用い、時系列でのmRNAレベルの詳細な解析。
  • Hes1タンパクの可視化モデル:
    Hes1プロモーター下にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスを用い、Hes1発現パターンを可視化して発現振動を証明する。
  • Hes1発現振動を消失させたマウスの作製:
    ユビキチン化システムによるHes1分解のターゲットとなるアミノ酸を変更したマウスを作製し、Hes1発現振動を消失させ、造血系への影響を解析する。

Hes1遺伝子の発現振動図
図5

 

主な発表文献

  1. 胚性幹細胞からの血液細胞誘導に関するreview
    (Yokoyama, Nishikii, Chiba. Embryonic Stem Cells in press)
  2. ヒト胚性幹細胞(ES細胞)からの好中球誘導
    (Yokoyama, et al., Chiba. Blood, 2009)
  3. Notchシグナルを用いた臍帯血造血幹細胞の体外増幅
    (Suzuki, Yokoyama, et al., Chiba. Stem Cells 2006)
  4. 成体造血幹細胞におけるNotch下流分子Hes1の役割の解明
    (Kunisato, Chiba, et al. Blood, 2003)

メンバー

スタッフ:

  • 小原 直
  • 横山 泰久
  • 錦井 秀和

大学院生:

  • 松下 賢司
  • 金沢 陽介