

血液内科で診療する病気
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化し、異常に増えることで起こる血液のがんです。リンパ球は全身に分布しているため、悪性リンパ腫はリンパ節だけでなく、胃や腸、皮膚、脳、副鼻腔など、さまざまな臓器や部位に発生することがあります。
悪性リンパ腫には多くの病型があり、それぞれ病気の進み方、治療法、治療後の見通しが異なります。年単位でゆっくり進行するタイプもあれば、週から月単位で急速に進行するタイプもあります。そのため、正確な診断に基づいて、一人ひとりの病気の状態に合わせた治療方針を立てることが重要です。
悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫の症状は、発生した部位や病気の種類によってさまざまです。比較的気づきやすい症状として、首、わきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れ、しこりとして触れることがあります。
一方で、胸やお腹の奥にあるリンパ節や臓器に病変がある場合には、自覚症状が少なく、CTやPET-CTなどの画像検査で初めて見つかることもあります。病気が進行すると、原因のはっきりしない発熱、寝汗、体重減少、全身のだるさなどがみられることがあります。これらは「B症状」と呼ばれ、病気の状態や治療方針を考えるうえで重要な情報となります。
悪性リンパ腫の診断
悪性リンパ腫が疑われる場合は、腫れているリンパ節や病変の一部を採取し、顕微鏡による病理検査、免疫染色、フローサイトメトリー、染色体検査、遺伝子検査などを組み合わせて診断します。病変の場所によっては、リンパ節を切除する検査のほか、針生検や内視鏡を用いた検査を行うこともあります。
悪性リンパ腫では、病型によって治療法が大きく異なるため、正確な病型診断が極めて重要です。当科では、院内の血液病理医とのカンファレンスに加え、必要に応じて院外の血液病理専門医とも連携し、多角的な検討を行っています。
また、当科では院内検査室と連携し、以前からリンパ腫診療における遺伝子検査体制の整備に取り組んできました。濾胞ヘルパーT細胞リンパ腫におけるRHOA G17V変異や、血管内大細胞型B細胞リンパ腫におけるMYD88、CD79B変異を対象としたリキッドバイオプシー検査など、当科から発信してきた研究知見も実際の診療に活かしています。診断が難しい症例では、ヘムサイト®をはじめとした遺伝子パネル検査などの最新のゲノム解析も活用し、より正確な診断や治療方針の決定に役立てています。
悪性リンパ腫の治療
悪性リンパ腫の治療では、薬物療法が中心となります。薬物療法には、抗がん剤だけでなく、抗体薬、分子標的薬、免疫を利用した治療薬などが含まれます。病気の種類や広がりによっては、放射線療法を組み合わせることもあります。手術は主に診断のための組織採取や、限られた状況で行われます。
初回治療では、病気の種類に応じて国内外で有効性が示されている標準治療を基本とします。代表的な治療として、B細胞リンパ腫ではR-CHOP療法やPola-R-CHP療法、ホジキンリンパ腫ではBV+AVD療法などがあります。ただし、実際に行う治療は、病気の種類や進行度、年齢、全身状態、合併症、生活背景などを総合的に評価して決定します。
再発した場合や治療が効きにくい場合には、分子標的薬、二重特異性抗体、CAR-T細胞療法など、新しい治療法も含めて検討します。病気の状態によっては造血幹細胞移植も選択肢となります。当科では、薬物療法、CAR-T細胞療法、造血幹細胞移植を含めた治療選択肢を比較しながら、患者さん一人ひとりにとって最適な治療戦略を提案しています。
当科の特色
当科では、年間100例を超える悪性リンパ腫の新規診断・治療を行っており、茨城県のリンパ腫診療の中核施設として幅広い症例を診療しています。診断から薬物療法、CAR-T細胞療法、造血幹細胞移植まで一貫した診療体制を整えており、再発・難治例や診断が難しい症例についても継続してご相談いただけます。
また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)をはじめとする多施設共同研究や治験にも積極的に参加しています。治験参加によって保険診療にまだない治療の選択肢を検討できる場合もあり、標準治療に加え、臨床試験や新しい治療法が適していると考えられる患者さんには、その内容を十分にご説明したうえで治療の選択肢としてご提案しています。
茨城県の血液診療の中核施設として、地域の医療機関と密接に連携しながら、初回診断から高度医療、長期フォローアップまで切れ目のない診療を行っています。私たちは、病気だけではなく患者さん一人ひとりの生活や価値観も大切にし、ご本人・ご家族と十分に相談しながら、納得して治療を受けていただけるよう最適な医療を提供します。
